先日北鎌倉の円覚寺に行って参りました。
まだ桜が咲く前でもあり、観光客もそれ程多くはありません。
入り口の門をくぐり抜け、よく整備されたお寺の境内を奥へ奥へと進んで行きます。
古都鎌倉らしく、他とは違った趣きのあるお庭を見学しながら一番奥まで行くと、
「佛日庵」と書かれた門に到着しました。
この「佛日庵」は 川端康成の「千羽鶴」に描写されたり、大佛次郎の小説「帰郷」に
描写されているようなので、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本堂の入り口に位置するこの門は、入り口から続く幾つかの門の中でも 、
それ程大きな門ではないのですが、桜の開花はまだもう少しでしたが、
その代わりに木蓮の薄いピンクの花が満開となっており、彩りを添えています。
さて、今回の参拝の目的はこの門を観る事でありました。
この門は実は20数年前に大工である私の父が建てた門であります。
当時父の作業場に行くと、角を丸く削られて加工された木々が数多く造られており、
まるで大きな積み木細工の様でした。
「何作っているの?」との問いに「お寺の門で、これをこうして、次にこれを上に載せる・・・」と、
積み木の様に積み上げていくその様子を見ていると、なるほど!柱の上の装飾なのだ!
これは斗(ます)と肘木(ひじき)からなる斗栱(ときょう)と言われる組物だそうです。
上部の荷重を集中して柱に伝える役目があるそうです。
梁には彫り物が施されています。
しっかりと木材が組み合わされています。
この門を造るため、丸くて太い柱は新潟の材木問屋まで買い付けに行ったのだとか。
そんな事が当時あったのですが、その門が完成してから一度も見に行っていなかったので、
休みを利用して散歩がてら見に行ってきました。
何十年、何百年も建ち続ける建物造りに携わり、実際に形として後世に残る物を造るのは、
これはやっぱり大工冥利に尽きるの一言かも知れません。
う~ん、やっぱり形に残る仕事ってイイな~。